interview_001 チョコレートの台座

86400"が販売している商品は、オーダーメイドから生まれた「生活の道具」です。
商品がどのような生活にもとづいて生まれたのか、クライアントへのインタビューを通じて探ります。

たった一人のための商品づくり

一人ひとりの生活が、共感でつながる。86400’’は、自ら積極的に商品開発するのではなく、オーダーメイドで生まれた商品を一般販売につなげるという新しい販売スタイルを採用している。その根底にあるのは、たった一人の個人のために開発された物が、まったく別の誰かの共感を呼び、その生活にもきっと役立つという想い。そんな86400’’がオーダーメイドで最初につくった商品が、このチョコレートの台座だ。

「86400’’を創業するときに、知り合いに金属加工職人さんがいたので、金属で『生活の道具』をつくるということをまず決めました。ただ、お客様からのオーダーメイドのご依頼が最初からあるわけではないので、まずは自分のための商品をオーダーしました」

創業間もないということもあり、このチョコレートの台座をオーダーしたのは、86400’’の代表である山本さん自身。そのため、自社発信のオーダーメイドではあるものの、たった一人の需要をもとに商品を生み出すという軸はブレていない。

「何かの型をつくって、金属でつくることはできる。でも、ただのオブジェにはしたくなかったんです。デザインするということは、見た目を整えることではなく、何らかの課題を解決することだと、僕は思っているので。そして、僕自身が実感している課題を解決するために、僕個人のために、このチョコレートの台座を考えました」

ちなみに、デザインの和訳は、設計である。建築の設計では、敷地の広さや周囲の環境、強度、法律、予算などのさまざまな条件をクリアしながら、依頼主の要望を叶えるために計画を具体化していく。設計とは、課題解決にほかならないのだ。建築士として、設計の仕事もしている山本さん。チョコレートの台座ひとつをとっても、ただ見栄えの良いものをつくるのではない86400’’の在り方が垣間見えて、とても興味深い。あと、ちょっと理屈っぽい。

一粒のチョコレートを存分に味わう

休日には、ご夫婦でサッカー観戦に出かけたり、甘味を求めて出かけたりしている山本さん。甘い物を食べるときには、お二人でシェアしながら、いろんなものを少しずつ楽しんでいるそうだ。

「元々甘い物が大好きなんです。でも、本当に美味しいと感じていられるのは、最初の一口か二口だけで、たくさん食べるとむしろ気分が悪くなることも…。だから、少しだけ食べればいいんですが、チョコレートに関しては、仕事をしながら惰性でダラダラと食べてしまっていて、この習慣は以前からやめないといけないと感じていました」

山本さんは自宅で仕事をしている。日常生活が自身の仕事と結びついていることもあり、あまりオンオフがなく、かなりの時間PCに向かって仕事をしているそうだ。そういう生活スタイルだと、確かに惰性でチョコレートを食べてしまうというのも頷ける。ただ、常に頭を使って仕事をしているから、体が糖分を欲しているという可能性も否定できない。であれば、欲に任せてチョコレートを食べてもいいんじゃないかとも思ってしまったが、余計なことは言わないでおこう。

「実際に使ってみてわかったんですが、冷凍庫で冷やした台座の上にチョコレートを乗せると、接地している面だけが冷えるので、冷蔵庫でチョコレート全体を冷やしたときよりも口溶けが良く、おいしく食べられるんです」

確かに冷蔵庫で冷やしたチョコレートは硬くなり過ぎてしまって、香りをあまり感じられないことは多い。

「香りをより楽しむ方法もあります。熱湯に入れて温めた台座の上にチョコレートを乗せると、チョコレートが溶け出して、甘い香りが立ち上がるんです。この使い方するときは、フレーバーチョコレートを使うのがおすすめです。満足感も高まるので、たくさん食べたいという気持ちも起こらないんです」

チョコレートの台座として使われていない事態に

山本さんはこのチョコレートの台座をオーダーした依頼主だ。しかし、商品販売をする側の立場でもあるので、せっかくならその辺りの内情もオープンにしてもらおうと話を伺ってみると、予想外だったこともあったそうだ。

「自分用にオーダーメイドでつくった後に、一般販売を開始。チョコレートの台座なので、女性のお客様が買ってくださるのかなと思っていましたが、実際に購入された方の多くが男性だったんです」

そうか、いわゆるスイーツ男子が購入したのだろう。今はそういう時代なのかもしれないと、勝手な推測をしたが、それはまったくの見当外れだった。

「購入してくださった男性からお話を伺ったところ、チョコレートの台座としては全然響いていなくて…。金属を加工して、珍しい商品を開発しているという、ものづくりの魅力に惹かれて買ってくださったそうです。また別の男性には、見た目のカッコ良さを評価していただき、購入していただきました」

この商品のコンセプトであるはずの、チョコレートの台座としての役割が失われかかっているにもかかわらず、笑顔で話す山本さん。

「形状にもこだわってつくっているので、オブジェとして使っていただいても、全然かまいません。小さなお子さんがこれに興味を持って、ブロックのおもちゃみたいにして遊んでくれることも想定していて、飲み込めないサイズにもしてあるんですよ。もちろん金属の塊なので、それなりに重量があって、足の上に落としたらけっこう痛いんです。だから、親御さんと一緒に遊んでほしいですね」

なるほど。台座以外の使われ方もきちんと想定はしていたが、意外にもメインではないところの魅力がお客様に伝わったということらしい。正直なところ、チョコレートの台座をつくるという発想は面白いが、おそらくこれを使いたいと思う人の数は限られていると思う。でも、そもそも山本さん個人のために生み出されたものなのだから、当然のことなのだ。そこから意外な方向へ転がっていく可能性を含め、この販売スタイルの面白さなのかもしれない。

どこかで自分事になる誰かの生活

「白状すると、実は僕自身もチョコレートの台座として使うよりも、手遊び用として、普段は机の上に置いていることが多いんです」

そう言えば、インタビュー中も、台座を手の中で転がしたり、机に立てたりして遊んでいた…。だが、オーダーをした当の本人がこれを言ってしまって、大丈夫なのだろうか。また、たとえ洗ったとしても、誰かが存分に手遊びしたあとの台座ではチョコレートを食べたくないなとも思った。チョコレートの台座は、ぜひ自分専用をおすすめする。

「でも、チョコレートを貪るようなことは実際に少なくなったんです。この台座があることで、チョコレートを食べるときには、台座のことが頭に過るようになって。チョコレートを食べるなら、台座を使うという自分のルールができたというのか、ある意味お守りのようなものになっています」

自身の課題や実感に基づいて、オーダーをした物であるからこそ、気持ちの結びつきが強いのだろう。なんとなく購入してしまったダイエット器具が使われぬまま、部屋の隅に追いやられてしまうことの逆の現象のようなものなのかもしれない。また、結果として、課題が解決されたのなら問題なし。そう理解して、締めくくろうとしたものの、やはり心配になってきたので、最後にチョコレートの台座としての話を探ってみた。

「もちろん、チョコレートの台座として使ってくださっているお客様もいらっしゃいます。あるお客様からは、もう少しサイズを大きくして、形状もオリジナルのものをつくってみたいというご要望もいただいています」

きちんとメインコンセプト通りに使っている方もいるようだ。ひとつのオーダーメイドが、また別のオーダーメイドにつながる。この話があったから、山本さんはずっと笑顔だったのか。いらぬ心配をして、損をした。

「使い方についてのご意見で一番多いは、この台座をバーに置いてもらって、ワインやウイスキーと一緒にチョコレートを楽しむというものです。確かに、大人がゆったりとした時間過ごすバーと、時間をかけて贅沢に味わうためのチョコレートの台座は、かなり相性が良い。マイグラスとマイ台座とか」

山本さんから感じるのは、ものをつくりながら、使いながら、さまざまな新しい発見をし、楽しんでいるということ。まさにこの多面体をしたチョコレートの台座のように、物事にはいろいろな面があって、人によって見え方や捉え方が違っている。この商品の使い方も人それぞれ。そういう面白さを、チョコレートの台座に見つけることができた。

(取材・文:八割計画 北田)

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チョコレートの台座 SV

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